Q. 鑑定ラベルのフェイクはわかるものでしょうか。
A. ラベルの世代毎の特徴を掴むことである程度は可能です。
「真正鑑定済/真正証明のステッカー・ラベルの偽物」で証明ステッカーやラベルの偽物に言及しましたが、同じようにトレカの真贋およびコンディションの鑑定証明である「PSAラベル」にも偽物が存在します。
そこで今回はPSAラベルの真贋チェックについて見ていきます。
同一の識別番号を持つ2枚のカード
今回チェックしていくのはこのカード
このカードは同じ識別番号(#20892034)が(少なくとも※)2枚確認されています。
画像右が今回の対象カード。
※個人的には更に複数存在している様にも思っており、その場合今回の問題設定よりももう少し複雑である可能性がありますが、
PSAラベルの検討過程をお示ししやすいことから本カードをテーマに選びました。
ちなみにこの識別番号をPSAのサイトで入力すると、以下の様な表示が出ます
各PSAラベルの世代の検討
PSAラベルの真偽を検討するため、比較対象となる「世代」を決定する必要があります。
PSAラベルの世代は「初代」から現行(2020年6月時点)の「10代目」まであると言われており、
世代によってラベルの特徴が異なるため、検討対象のラベルがどの世代のラベルの書式に則っているかを明らかにする必要があります。
PSAホロマーク
今回のカードで最初に注目するのはラベル下部中央にフォイルのPSAマークです(画像が悪くて見にくいですが、青矢印で示したところにうっすらと四角が見えます)
このマークですが、8代目から最新の10代目までに印刷されており、それ以前のPSAラベルには印刷されていません。
このホログラムシールにより、このラベルが8代目か9代目のラベル(またはそれを偽造したもの)ということがわかります。
PSA白抜き印刷
次にラベル上部、赤印刷部分の白抜き「PSA」印刷に着目します。
この「PSA」印字は8代目と9代目で違いがあります。とても微妙ですが。
それぞれにマス目をかけてみましょう。
緑の線で示していますが、9代目は(8代目と比較して)
「S」が横に広く
「P」の足が短い
のです。
それを踏まえて今回のチェック対象を検討してみると、
9代目のフォントであることがわかります。
これらより、今回のチェック対象は第9代目のPSAラベル(またはそれを偽造したもの)ということが判明しました。
同世代ラベルでのフォント比較
次に今回のチェック対象と他の9代目PSAラベルを比較して異同の有無を調べます。
なお、比較するラベルは本来複数であるべきなのですが、説明上の便宜のため今回は1枚だけ比較します。
今回は運よくジョーダンRCの9代目ラベルが見つかったので、こちらを比較対象とします。
比較対象と今回のチェック対象を並べて見ましょう。
よく見ていると次の違いに気が付きます。
①丸が上下に二つ重なるフォントの丸の大きさの違い(「8」や「3」で比較対象は下の丸が大きく、チェック対象は上の丸が大きい)
②フォント「6」の書き始め部分と円の間の間隔の違い
③フォントの太さの違い(「R」の右足やTの横棒で、比較対象は書き終りが細くなっているのに対し、チェック対象は書き始めと同じ太さ)
以上より、チェック対象のPSAラベルは本物とは違う部分があるということが判明しました。
補足
購入を考えている場合にはPSAラベルが怪しいという時点で「検討外」になりますが、ここではカードの真贋についても少し言及します。
FleerジョーダンRCほど有名なカードになるとフェイクも数えきれないほど存在し、その特徴も様々ですが、このカードには偽物の典型的な特徴があります。
まず本物としての比較対象として以下のカードを基準とします。
ちなみにこのPSAラベルはラベル下部のPSAロゴが「lighthouse」と言われるロゴマークなので、10代目(執筆時点で最新)です。
そして、この比較対象と今回のチェック対象のそれぞれカード右上のFleerロゴを比較してみると…
比較対象の方が右側の矢印が少し下に下がっているのがわかります。
対してチェック対象は矢印が「PREMIER」と書かれている帯より高い位置にあります。
このことから、このカードも本物ではないという可能性が高いことが分かります。
PSAラベルを鑑定することの労力と効果
今回はだいぶ簡略化して検討過程を記載しましたが、実際に行うとなると
「対象となるラベルの世代が判別できない(情報が足りない)」
「比較に適したラベルが見つからない(比較できるフォントがない)」
「自分の判定と世間の判定が異なる」
など中々一筋縄ではいきません。
現実問題としてPSAラベルのフェイクはまだそんなに多いものではない様です。
一度ヤフオクに出品されているPSAラベルをざっくり調べて見たことがありますが、今回の様なフェイクは確認できませんでした(見逃している畏れは多分にありますが)。
しかし注意しないといけないのは、数は少なくとも高額なカードほどPSAラベルの偽物リスクがあり、PSA自身が以下のように謳っている通り、ラベルの世代更新をしてセキュリティを高めているのが偽物が存在する証拠と言えるでしょう。
プロに鑑定されている(筈の)カードをコレクターが苦労して再び判断するというのも本末転倒な話ですが、
良いコンディションであることを示すラベルが大きな付加価値を生む現在の流れではやむを得ないのかもしれません。
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