【トレカ】グレツキーT206ワグナーの歴史(その5)

 

1995 グレツキーT206ワグナー、ウォルマートに売却され懸賞商品となる[価格$500,000]

 

取引関係

グレツキーマクナルはグレツキーT206ワグナーをウォルマート50万ドルで売却します。

プロモーションの懸賞商品としてウォルマートは入手したのですが、当選者の事情により同カードは即マーケットに戻ってくることになります。

 

補足

グレツキーがT206を手放そうと考えた理由は不明ですが、この時期あたりからグレツキーがキングスからの移籍を希望していたともいわれています。

とするならば、公私ともにマクナルとの関係を清算する時期に来ていたのかもしれません。

一方、ウォルマートはキャンペーンの賞品としてグレツキーT206ワグナーを購入しました。

このキャンペーンはカードメーカー各社の協賛を得た大規模なものであり、その内容はウォルマートで対象のカードパックを購入すると懸賞に応募できるというものでした。

懸賞賞品の一番の目玉はグレツキーT206ワグナー。
しかし他にも65トップスのジョー・ネイマス、48ボウマンのジョージ・マイカンなどが用意されており、メーカーの協賛といい、ウォルマートの力の入れようが分かるというものです。

このキャンペーンの目的は、これからウォルマートが店頭でトレーディングカードの取り扱いを始めるため、コレクターにスーパーでトレカを買う習慣をつけてもらうことでした。

Wal-Martのトレカ売り場

 

つまり、カードショップの既存顧客を奪うためにウォルマートが仕掛けたマーケティング戦略というわけです。

さらに「トレカ=ウォルマート」という印象を与えるため、ウォルマートはグレツキーT206ワグナーとアメリカ中を巡回したそうです。

今でもウォルマートとトレーディングカードは深い関係にありますが、その歴史にはグレツキーT206ワグナーも関わっていたのです。

 

さて、抽選の結果、グレツキーT206ワグナーを手にしたのは郵便局員だったパトリシア・ギブスという女性。

しかし彼女は50万ドルもの「資産」に課される税金を支払えず、グレツキーT206ワグナーは即刻売却されることになりました。

このあたりのやりとりもやや不自然さを感じるのですが、今のところ上記以上の事実関係を示している資料は見つけられていません。

 

 

 

1996年、マイケル・ギドウィッツがグレツキーT206ワグナーを入手[価格:$641,500]

 

取引関係

ギブスからグレツキーT206ワグナーを買い取ったのはマイケル・ギドウィッツという人物でした。

彼は1991年のサザビーズオークションにも参加し、グレツキーとも競ったコレクターです。

今回の落札額は約64万ドルと91年より20万ドル高額となりましたが、当時ギドウィッツは「今のグレツキーT206ワグナーにはその価値がある」と語っています。

 

補足

ギドウィッツもまた、グレツキーT206ワグナーを「投資物件」として捉えていた節があります。

以下はギドウィッツのコメントより

「私はマクナルに電話し、そのカードを100万ドルなら売るのかと尋ねた。マクナルは売る気は無いと言い、特に私のことも気に留めていなかったようだ。」

「(ウォルマートに50万ドルで売却することになったときには)マクナルは私の連絡先を聞いておくべきだったと後悔しただろう」

「グレツキーとマクナルが支払った45万ドルより、私が支払った64万ドルのほうが価値がある。というのも、今のカードには『グレツキーが保有していた』という付加価値があるからだ。」

「グレツキーT206ワグナーは100万ドルで売れるだろうし、私は世界で初めて野球カードを100万ドルで売った男になるだろう。」

 

コメントを見て頂くとわかるように、彼はしばしば「お金」や「100万ドル」に関連づけてグレツキーT206ワグナーについて話していたため、後々「100万ドルが欲しかった男」という(少し品の無い)イメージで紹介されるようになります。

【その6に続く】