【Fake/Forged】PSAラベルの真贋チェック(その2)

PSAラベルの真贋判断は2020年6月に「PSAラベルの真贋チェック」というタイトルで一度投稿しております。

【Fake/Forged】PSAラベルの真贋チェック

しかし最近これまでにないほど多くの偽PSAラベルが発見されており、また私の判断方法も1年前からブラッシュアップしてきたので、直近の事例をサンプルに再度PSAラベルの真贋フローを掲載することに致しました。

 

 

判断対象カード

真贋判断の対象とするカードはebayで発見された1993 SP Derek Jeter (MINT9) Cert#22304379です。

 

 

3通りの判断方法

私はPSAラベルの真贋判断に以下の3つの方法を使用しています。

■バーコード読込
■フォント(書体)比較
■フォーマット比較

今回はこの3通りそれぞれで判断していきます。

 

 

バーコード読込

PSAラベルの「Certification Number」と「バーコード」のいずれかを使うと、同カードのPSA登録内容が確認できます。

バーコードはPSAのアプリを使用することで簡単に読み込むことができ、かつ画像上のバーコードでも読み込めます(但し粗い画像は不可)。

ラベルの偽造ではCertification Numberは偽造できても、線の太さの違いで表現されるバーコードの再現を失敗しているものがあるため、真贋判断として利用できます。

※ebayのアイテム画像は、ウェブよりもebayアプリのほうが画像が鮮明ですので、鮮明な画像が得られない場合にはいろいろと工夫してみてください。

 

今回のCertification NumberをPSAに入力して得られる登録画面はこちらです。

バーコードを読み込んで同じ画面が表示されるかというと・・・何度試してもPSAのアプリはバーコードを認識しません。

つまりこの疑わしいPSAラベルは、バーコード読込チェックでは「クロ」となります。

 

 

フォント(書体)比較

PSAラベルのフォント書体を比較して真贋を判断する方法です。

使用するフォントに決まりはありませんが、私の経験上、Certification Numberの「3」「6」「9」だと書体の違いが出やすいようです。

 

【3の特徴】
上下の釣り針型部分が上下に向き合ってている(始筆部分と終筆部分が向き合っている)

 

【6・9の特徴】
6は「書き始め」、9は「書き終わり」がリング部分に接近している

 

Wordで使用できる書体で似ているものを挙げるならば、
PSAラベルが使用している3は「Arial Rounded MT Bold」(太さは無視しています)、
同6・9は「MingLiU_HKSCS-ExtB
が近いと思いますので、気になる方はWordで確認してみてください。

 

では疑わしいラベルの書体を比較してみます。Cerftification Numberに3があるため、この「3」を正しいラベルの「3」と比較してみると

左:疑わしいラベル
右:正しいラベル

疑わしいラベルの3はWordの書体でいうと「MicrosftJheng Hei」に近く、上下の釣り針型部分が左側を向いているのがわかります。

 

つまり書体比較でも、この疑わしいPSAラベルは「クロ」といえるでしょう。

 

 

フォーマット(書式)比較

最後にフォーマットの比較によって真贋を判断します。

PSAのラベルは誕生から幾度かのフォーマット変更を経て現在の形に至っています。

現時点(2021年5月)で使用されているPSAラベルは(確か)2017年に変更されたもので「10番目の書式」です。

以下では書式の別を古い順から「第1世代、第2世代」と表記します(なので、現在の書式は第10世代となります。)

 

この書式は世代ごとの特徴があるため、今回の疑わしいラベルがどの世代のフォーマットを踏襲しているかを明らかにすることで、同世代の別ラベルとの比較により異同を明らかにすることができます。

 

今回は最初に「グレード」に着目します。

この疑わしいラベルでは「MINT」「9」が2段となっており、この2段構成は第7世代~第10世代に共通する特徴です(第6世代以前は一段で印刷されています)。

これにより、この疑わしいラベルは第7世代~第10世代のいずれかを踏襲している可能性が高くなりました。

 

次にラベルの下部中央に注目します。

現在のラベル(第10世代)のこの場所には「Lighthouse」と呼ばれる偽造防止のセキュリティホログラムが貼付されています。

 

また、第8世代・第9世代では同じ場所に長方形の枠に囲まれたPSA箔が印刷されています

 

そして第7世代以前は何も印刷されていません。

 

つまりこの疑わしいラベルは第7世代の書式を踏襲していることがわかりました。

 

世代が特定できたところで、疑わしいラベルと他の「正しい」第7世代のPSAラベルと比較します。

上:疑わしいラベル
下:正しいラベル

 

赤枠部分の上部、白抜き文字のPSAの書体が相違していることがわかります。

上:疑わしいラベル
下:正しいラベル

 

疑わしいラベルの白抜きPSAはやや小さく縦長で、正しいラベルの白抜きPSAが太く横長に見えます。

この疑わしいラベルの特徴、やや小さく縦長の白抜きPSAは第2世代のラベルの特徴と一致します。

つまり、疑わしいラベルの中では踏襲されている世代の不一致があり、

想像するに、偽造者の手許にあった第2世代のブランクPSAラベルに、正しいPSAラベルの書式を見ながら入力していったと考えられます。

 

この結果、フォーマット比較でも、この疑わしいPSAラベルは「クロ」となります。

 

以上、3通りの方法にて真贋判断した結果、いずれも「クロ」という結果となり、
この疑わしいラベルが偽造である可能性は極めて高いと判断します。

 

 

以下にこの偽造ラベルの下となった正しいラベル(カード)を掲載します。

この元ラベルと偽造ラベルを比較しなかったのは、疑わしいラベルに出会った場合、ほぼ100%の確率で元の正しいラベルの画像は入手できず、比較対象となり得る他のPSAラベルを自分で探してきて判断するため、その状況を再現したかったからです。

 

 

望ましいのは2以上の方法の併用

今回説明した3通りの方法は、できれば2つ以上、可能であれば今回のように3つ全てを併用して検証するのが望ましいです。

 

理由は

■バーコード読込
⇒フェイクPSAラベルにはバーコードが読み込めるものがある

■フォント(書体)比較
⇒PSAの書体は過去に何度が変更されている

■フォーマット比較
⇒世代の特徴を全て正しく踏襲しているフェイクPSAラベルも存在する

 

事実、海外でフェイクと判定されたPSAラベルのうち、上記の3通りのチェックでは違いがわからないというものも複数ありました。

そのため「クロ」の結果が出ないうちは、複数のチェックを重ねることがリスク回避には必要と思います。

 

 

フォーマット比較の難しさ

3通りのなかでフォーマット比較の難易度が一番高いと思われます。

というのも、比較を行う前提として

■第1世代~第10世代のすべての正しいPSAラベルを集める
■各世代の特徴および世代間の異同を把握する
■10個ある世代のなかから1つを選べるためのフローを構築する

が必要となるからです。

 

このうち、全世代のPSAラベルのサンプルは海外サイトに点在していたり、ある程度まとまっていたりするため、時間はかかるでしょうが収集は可能です。

 

しかし、それ以降は自分で作業しなければなりません。

海外サイトに掲載されている「各世代の特徴」は1つ前の世代と比較した異同ですので、例えば「第3世代のラベル」と「第5世代のラベル」と「第7世代のラベル」の何が同じで何が違うのかは自分で検証しながら整理しなくてはいけません。

 

また、10個ある世代から疑わしいラベルが踏襲している世代と選ぶというのは、「残りの9つの世代との違いを見つける」ということとなり、そのためにどのポイントをどういう順番で見ていくのかというフローも自分で構築しなければなりません。

 

私の例で恐縮ですが、私はラベルの表裏あわせて8つの項目を選び出し、極力効率的に候補の世代の取捨選択できるよう偽造ラベルによってフローを組みなおしています。

一番効率的に候補を絞れるのはラベル裏面の比較なのですが、疑わしいラベルでは裏面の画像が提供されていないことが多いので、それによってもフローを組み替えています。

 

今回のフェイクPSAラベルも裏面画像はebayに掲載されていなかったようです。

私のフォーマット比較も完全とはいえませんが、フェイクと戦うためには少しでも「武器」でもあったほうがよいため、できれば共有したいと思っています。

しかし、ラベルに関する情報量が多いうえに、それらを表現するためには自由度の高いフォーマットが望ましいので、本ブログでの掲載は困難であると判断しています。

 

いずれ冊子形式でリリースすることは希望しているので、興味がある方には今しばらくお待ちいただければと思います。