【Fake/Forged】2005年ジム・ソープジャージーカード真贋疑惑

Q.2005年にドンラスがリリースしたジム・ソープのジャージーカードは偽物なのでしょうか。
A.真相は明らかになっていません。しかし、偽物の可能性はあります。

疑惑の概要

旧ドンラスがMLBライセンス喪失直前に目玉商品として投入したのが、ジム・ソープのジャージーカードです。

(おそらく)ソープ初のジャージーカードで、2005 Absolute Memolabilia MLBではベーブと並び人気を博しました。


このカードに使われたソープのGUジャージーに対して「偽物ではないか」という疑惑があります。

 

なお、本件は依拠できる資料が少なく、おもに『HAULS OF SHAME』の記事をベースに作成しています。

 

 

カード化されたソープの実使用ジャージー

1918年使用のNew York Giants Road Jersey

この使用年(1918年)が重要であるため、このジャージーを以下「1918年ジャージー」と呼びます。

 

 

 

登場人物

ジム・ソープ

戦前のスポーツ万能選手。
1912年ストックホルムオリンピック近代5種・10種で金メダル。
MLB、NFLでもプレー。
【MLBでのキャリア】
ニューヨーク・ジャイアンツ (1913 – 1915,1917)
シンシナティ・レッズ (1917)
ニューヨーク・ジャイアンツ (1918 – 1919)
ボストン・ブレーブス (1919)

 

バリー・ハルパー

MLBアイテムのスーパーコレクター。
特に実使用ジャージーの収集に力を入れていた。

 

 

 

経緯
1998年
ハルパーは自身のコレクションの一部を野球殿堂博物館に800万ドルで譲渡。
同博物館はこのコレクションを元に「バリーハルパーギャラリー」を設ける。

1999年
バリーハルパーのコレクション品群がサザビーズに出品される。
そのなかには今回の1918年ジャージーも含まれていた。
落札額:$46,000
落札者:グレッグマニング社

2004年
1999年に落札された1918年ジャージーがグレイ・フランネルオークションに出品される。
落札額:$59,500
落札者:ドンラス社

2005年
前年に落札した1918年ジャージーを使用して、ドンラス社がジャージーカードをリリース。

 

 

 

ハルパーコレクションに対する疑惑
ハルパーコレクションに対して偽物であるとの指摘が少なくない。

例えば・・・
✔️”シューレス”ジョー・ジャクソン GU Jersey
ジャクソンが引退した後に作られた素材を使って作られていると野球殿堂博物館が鑑定。

✔️ミッキー・マントル Rookie year GU Jersey
偽物であるMEARSのジャージー専門家Dave Grobが偽物であると鑑定。

✔️ジミー・コリンズ GU  Jersey
グレイ・フランネル社が本物であるとお墨付きを与えるのを拒否。

✔️ニューヨークポストがハルパーのコレクションが偽物であるという記事を掲載。

 

 

 

1999年オークション時のハルパーコレクションの事前鑑定

1918年ジャージーが初出品された1999年のサザビーズでは、オークションハウスによる事前の鑑定でハルパーコレクションの出所に疑義がある旨が示されていた。
例えば
✔️いくつかのジャージーにはタグがなく使用者を示す証拠が不明
✔️ジャージーの番号(おそらく背番号)に変更された形跡がある
✔️1918年ジャージーをソープが使用したという証拠は、ソープのチェーンステッチネーム以外に見当たらない。
(このステッチも2005年にカード化)

 

 

 

1918年ジャージー偽物説の根拠
1918年ジャージーを偽物とする見方は、「1918年ジャージーのデザインが1920年のものである」ことを根拠としています。

以下ではこの根拠について見ていきましょう。

まず1918年と1920〜21年のジャイアンツのロードジャージーを着用した選手の写真を比較してみます。

1918年

(選手:ロス・ヤング)

1920-21年

(選手:カート・ウォーカー)

胸部中央の「A」「N」パッチ部分に違いがあるのがわかるでしょうか?

まず、1918年のジャイアンツジャージーは「A」と「N」パッチの間にユニフォームの「合わせ」部分がきています。

 

一方、1920年のジャイアンツジャージーは「A」パッチと「合わせ」が重なっているため、「A」のパッチが分かれています。

これを踏まえて、1918年ジャージーを見てみると、「A」と「合わせ」が重なっているのが確認できます。

そのため、このジャージーは1918年のものではないと指摘されています。

なお、Aのパッチが分かれるタイプのジャージーは1920年に登場します。

ソープは1919年にジャイアンツを退団しているため、1920年以降のジャージーに袖を通したことはないでしょう。

この1918年ジャージーを偽物とする見解では、ソープのチェーンステッチネームも後付けされたものと考えられます。

 

 

 

真実は闇の中
ジャージーの年代比較結果、そしてハルパーコレクションに対する疑惑。
これらから考えると、ドンラスがカードに使用した1918年ジャージーは偽物であるという主張には一定の説得力があります。

一方で、この話には疑問点も少なくありません。
例えば、
✔️ 1998年に野球殿堂博物館がハルパーコレクションを譲り受けたときに真贋判定しなかったのか。
✔️1999年のオークション時点で偽物の疑いがあったのに、何故サザビーズはオークションを開催したのか。
✔️ 2004年のオークション時にドンラスは疑惑を調査しなかったのか。

つまり、1918年ジャージーを偽物とした場合、関係当事者の行動にスッキリしない点が出てくるのです。

しかし、これらの疑問点に対して当事者は何も語らないまま。
資料も見当たりませんでした。

 

そのため、1918年ジャージーは偽物とまでは結論づけられず、真実は未だ闇の中です。