Q.スコアボード社の直筆サインカードの問題点はなんでしょうか。
A.一般コレクターからすると、真贋判定の基準となる本物がどれかわからないことです
スコアボード社とは
スコアボード社とは、スポーツメモラビリアを扱っていた会社で、ゴールディン親子によって設立されました。
売上の4分の1がメモラビリア、残りの4分の3をスポーツトレーディングカードが占めており、
トレーディングカードではカレッジブランドやNBAなどのリーグのライセンスを使用しないカードを発行していました。
コービー・ブライアント 直筆サインカード
元ロサンゼルスレイカーズのコービー・ブライアント氏と同社との関係は、同氏がプロ入りする前のカード(プロ入り後はNBAライセンスを使用しないカード)をスコアボード社が発行していました。
1996年から数年間、直筆サインカードもリリースしています。
スコアボード社のサインカードをめぐる疑惑
これまで一定のコレクターは「トレカ/サインメモラビリアを問わず、スコアボード社のアイテムはリスクが高い」という共通認識を持っていたと考えていました。
その理由はフェイクまたは疑わしいアイテムが多いから。
ebayで「score board COA」などで検索してみると、驚くようなアイテムが出てきます。
海外の掲示板ではこれらの多くはフェイクだとしています。
スコアボード社の倒産
疑惑の元凶はスコアボード社の倒産にあります。
スポーツメモラビリアで創業しトレーディングカードビジネスにも拡大していったスコアボード社ですが、1998年には「トレーディングカードマーケットの縮小に対応できなかった」ことを原因として業容が悪化、倒産に至ります。
この倒産に伴う資材売却でカード台紙やサインカードに押す刻印が流出し、それらが贋作者の元に行き着いたと言われています。
実際、1999年に行われたフェイク業者の一斉捜査作戦「オペレーションブルペン」では、贋作者の工房からスコアボード社のCOA、刻印その他資材が発見されました。
これらの事情から、スコアボード社のアイテムは危険であると見られています。
偽物のサインの見本を集めた書籍『50 Most Forged Sports Autographs』は、
2008年にスコアボード社のコービー・ブライアントの偽物の直筆サインカードが大量にマーケットに流れ込んだことを記載しており、その理由として上述の事情を挙げています。
コービー・ブライアント逝去後の混乱
2020年1月26日にブライアント氏が墜落事故で死亡した後、スポーツ関連する各マーケットが混乱しています。
ブライアント氏に関連するアパレルやグッズが飛ぶように売れているのです。
これにスポーツメモラビリア市場も巻き込まれました。
日米問わず、同氏のカードやサインが売れ、ルーキーカードである96 ToppsはPSA10ランクの値段がebayで事故前の$250前後から$1500〜$2000に高騰しています。
↑1月21日時点
↑1月27日時点
このバブルともいえる状態も異常ですが、さらに問題なことはマーケットの活況が多数のフェイク商品を呼び込んでいることです。
この状況を憂い、BASのファウンダーであるスティーブ・グラッド氏などは盛んにアラートを上げていますが、今のところ収まる気配はありません。
高値で買われるスコアボード社のサイン
そのような中でこれまでカードコレクターが敬遠していたスコアボード社のコービー・ブライアントサインカードも高値で続々と売却されています。
それらの中には首を傾げたくなるものもあり、十分に検証されていないようです。
どのような状況なのか、「1996 Score Board Autographed BK Autograph Kobe Bryant」 を例に検討してみましょう。
1996 Score Board Autographed BK Autograph Kobe Bryantの基本形
まず、このサインカードには基本的な「型」があります。
①カード左辺を下にして書かれたフルネーム
②カード右下隅にある「Authentic Autograph」の箔押し
③カード裏面の証明書
これらが基本的な形であり、ブライアント氏逝去前にはこれに合致しないものは一顧だにされない状況でした。
基本形から大きく離れたサインカード
しかし、同氏が逝去した1月26日以降、状況が変わります。
同日以降、これまでに入札/落札されたものを見てましょう。
約300ドルで入札中
①カード下辺を下にして書かれたファーストネーム
②右下隅の箔押しなし
③裏面証明書なし
約1500で落札
①カード右辺を下にして書かれたfull name
②右下隅の箔押しなし
③裏面証明書なし(代わりに左下隅に基本形にはない刻印とCOA)
基本形を備えたカードの難しさ
また基本形を備えたカードでも真贋の判定が困難です。
以下に鑑定会社の鑑定済みのカードを並べてみました。
見て頂くと分かるようにサインの形がそれぞれ異なります。
さらに、右下隅の箔押しの「P」の位置を比較して頂くと、
ちょっとずつズレているのがおわかりでしょうか。
鑑定済みのカード同士でこのような差異があると、発行から20年以上たった現在では寄るべき基準を見出すのが困難です。
このため、私は鑑定済みのカードですら購入を躊躇します。
しかし、無鑑定でも高値で買い手がつくのが現状です。
(注釈)今回の記事では「どれが本物か」を明らかにすることが目的ではなく、スコアボード社のオートカードの混乱具合を実感して頂くことを目的としています。
落ち着いてからでも遅くはない。
『50 Most Forged Sports Autographs』では、「注意!それは本物ではないかもしれません」というタイトルで以下のように諭しています。
直近で他界したアスリート;
著名な人物やスポーツ選手が他界したとき、彼らのサインは反射的に値上がり、そしてそれは殆どの場合、最悪の買い時です。
というのも、1つには値段がインフレを起こしているので数ヶ月後には値下がる、2つにはニセモノ作者が偽物のサインを一生懸命マーケットに送り出している時だからです。
デビューから引退までサインを書き続け、さらにはジョーダン引退からレブロン登場までの間、一人でアッパーデックのNBAサイン部門を背負っていたブライアント氏です。
書いたサインの数は数ヶ月でマーケットから消えるようなものではないでしょう。
まだ同氏が逝去されてから数日。今は追悼の気持ちを大事にしたいですね。