Q.ヴィンテージボックスが売買されるときに重要な点はなんですか。
A.未開封であることです。
未開封ボックスの高騰
近年、ヴィンテージカードの未開封ボックスが高騰傾向にあります。
いくつか例をあげてみましょう。
61-62 Fleer Basketball $84,000
1971 Topps Baseball 4th $77,675
86-87 Fleer Basketball $73,200
1959 Topps Baseball 4th $57,600
79-80 O-Pee-Chee Hockey $55,200
1969 Topps Football series 2 $24,000
より良い状態のヴィンテージカードを求める人たち
これらの高騰は「ヴィンテージカードの高騰」がきっかけといわれています。
例えば61-62 Fleer Basketballには以下のRCが封入されています(後ろの金額はベケットのハイプライス)
Wilt Chamberlain $1,200
Oscar Robertson $500
Jerry West $600
このうち、Chamberlainの状態の良いカードになると、以下の金額で落札されています。
PSA9:$38,400
PSA8:$22,200
PSA7:$ 3,360
このように状態の良いカードだと極めて高い価値がつけられるため、
まだ誰も手をつけていないBoxに対するニーズが高まっているということです。
また、高騰化を受け、
コレクターのみならず富裕層の投資/投機先になっていることも更なる高騰化の一因になっているそうです。
カードを抜いた後、再封
高騰化により、当然、悪い事を考える人々も出てきます。
例えば、未開封Boxの中から狙いのカード(例えば86-87 Fleer BasketballならM.Jordan RCなど)を抜いた後、再び封をし「未開封」と偽って売却。
これは実際に起きている不正です。
以下の画像は掲示板などに「再封が疑われる」としてあげられたパック達です。
そもそも現在主流のトレカのフォイルパックは、
カードの高級化に伴い「カード抜き取り&パック再封」を防ぐ為にアッパーデックが導入した施策でした。
裏を返せば、それ以前の「Wax Pack」は、そのような不正が起きていた(それもメーカーが対応するレベルで)ということです。
※余談ですが、私の同人誌も疑わしいカードを掲載(=包む)するなら、表紙は不正が横行していたWax Packしかないだろうということで、
表紙は「86-87 Fleer」、タイトルも「疑問カード Wax Pack」としました。
では、フォイルパックではそのような不正は無くなったのでしょうか。
残念ながら、フォイルパックになった現在でもカードの抜き取りとパックの再封は行われてるそうです。
後述するBBCEのスティーブ・ハート氏は以下のように話しています。
「例えばNBA 03 -04 アッパーデック商品では、パックの底が切られ、機械でそれを再圧着した跡が見られるものがある」
パックの下部の圧着部分(ひだ)が、不自然にフラットになっているものが存在するそうです。
そして、「木を隠すなら森」とばかりにBoxに放り込み、「未開封」をうたって売却が試みられるというわけです。
●未開封ボックスの鑑定
このようにパックス&ボックスの不正が行われる一方で、それを見破る人たちが出てきます。
さきほど高額落札Boxとして掲げた画像をもう一度見てみてください。
ほとんどのBoxが同じデザインのシュリンクに包まれている事に気がつくと思います。
このシュリンクに印刷されているイラストはこちら。
これは、Boxが未開封であることを認証するサービスを提供している会社
『Baseball Card Exchange(BBCE)』のロゴです。
私の知る限り、Boxの未開封を認証するサービスを提供しているのはこの会社のみです。
BBCEはBoxが未開封であることを認証した場合、鑑定証をボックスの外側に差し込み、BBCEのシュリンクを掛けます。
オークションハウスに出品され、高額になる未開封ヴィンテージBoxは、私が見ている限り、ほぼBBCEの鑑定を受けています。
それだけ、BBCEはアメリカのカード業界で信頼されているという事でしょう。
事実、BBCEは鑑定依頼のBoxを週に300〜500箱ほど受け入れており、
鑑定作業が追いつかないため、2019年の夏には約2ヶ月間受け入れを停止したほどです。
広がる「派生サービス」の領域
ヴィンテージBoxのマーケット並びにBBCEのサービス領域は、近年拡大してきた新たなマーケット/新たな派生サービスといえるでしょう。
これはアメリカのメモラビリアマーケットが、これまでと異なるレイヤーで拡大していることを意味しています。
アメリカで新たに登場した「着用できるメモラビリア」や「一口持ち主制度」などの他の派生サービスにも言えることですが、これらの根本にあるのは
「信頼できる鑑定」
です。
トリミング問題などでトレカの鑑定に対する信頼が揺らいだようにも見えますが、PSAは四半期で業績を伸ばしていますし、
アナリストも「疑惑があるとはいえ、コレクターの鑑定志向は揺らがない」と予測しています。
翻って、日本は?
日本のコレクターとして考えてしまいます。