【実使用】マーケットに流れた実使用違法バット

Q.誰が実使用と見られる実使用違法バットをオークションに出品しているのでしょうか。
A.MLB関係者であることが少なくありません。

 

マニー・ラミレスのコルクバット

 

トレカコレクターが違法バットと聞いて思い出すのは、このカードでは無いでしょうか。
2000 Pacific Invincible Manny Ramirez Bat
バット中央の茶色い部分がコルクです。

 

当時本人は「自分のでは無い」と主張していたと記憶しています。
が、実はマーケットに出てきたマニー・ラミレスのコルクバットはこれだけではありませんでした。

 

 

2012年のグレイフランネル社オークションに出品されたマニーの実使用バットはX線調査の結果、コルクが埋め込まれていることが明らかになりました。

 

このバット、出所はマニーの同僚だったホセ・オファーマン。

同選手がコルクバットであることを知っていたのかどうかは定かではありません。

 

ちなみにこのコルクバットの落札額はたったの700ドルでした。

 

このように選手が他の選手の違法バットをオークションに出品するケースは他にもありました。

 

 

 

サミー・ソーサのコルクバット

 

それは2003年6月のカブス対レイズの試合での出来事です。

最初の打席でサミー・ソーサがセカンドゴロを打った際、バットが砕け散りました。

審判がそのバットの破片を手に取ったところ・・・中にはコルクが。

その試合でソーサは退場処分となりましたが、同時に2つに割れたコルクバットの先端部分の行方もスタジアムから姿を消しました。

 

そして2010年、行方不明となっていたコルクバットがオークションに出品されます。

出所は、コルクバットが発覚した当時カブスでチームメイトだったマイク・レムリンガー。

レムリンガーは2003年の試合時にコルクバットを入手し、ずっと保管していたそうです。

 

このコルクバットはオークションの最低落札価格に到達せず一回は流れましたが、
その後某レストラングループのCEOが16,500ドルで購入。

シカゴスポーツ博物館に展示されていたそうです(現在は不明)。

 

 

 

最古?のコルクバット

 

マニー・ラミレスやサミー・ソーサ以外も使用していことが明らかになっているコルクバット。

 

その歴史はどのぐらいまで遡れるのでしょうか。

第二次大戦後? 第二次大戦前?

 

おそらく最古だと思われるのは20世紀初頭。

その証左となるバットもオークションに出てきています。

これらは1900年代初頭のバットなのですが、画像中央の「ノブが球体状になっているバット」がコルクバットです。

このバット(「ボールバランスバット」といいます)のバレル中央部分が削れているのがわかるでしょうか。
この削れている部分から顔を出しているのがコルクです。


オークションハウスはアイテムの解説で以下のとおり述べています:

(ルール違反である)コルクバットが現在どのくらい使用されているのかはわからないが、1つ言えることは
コルクバットが野球の発祥とほぼ同じくらい古いように見えるということだ

 

このオークションではコルクバットを含め、3,000ドル弱で落札されました。

 

 

 

アメリカンヒーローのコルクバット?

 

違法バットの使用が発覚すると、大体の場合その選手にはダーティーなイメージがついてしまいます。

少なくとも発覚前の人気を維持するのは難しいでしょう。

では、このバットの持ち主はどうでしょうか。

これはグレイフランネル社が出品前に実使用バットをPSA/DNAに鑑定を依頼し、その過程で撮られたX線画像です。

このX線写真を撮影した専門家は曰く

バレル上部中央の円筒状の空間に、コルクが入っている

 

では、このバットを使っていた選手とは?

ミッキー・マントルです。

 

2013年のこのオークションは大きな話題となりました。

アメリカで最も愛されてるバッターの1人といっても過言では無いマントルがコルクバットを使用?

 

現代(2019年)から当時の報道を調べてみると、この事実を淡々と告げる記事もある一方、

「コルクバットを使用していてもマントルの価値は毀損されない」

「このバットはマントルが使用したものでは無い」

といった記事も少なくなく、ファンもどう受け取って良いのか戸惑っていたような印象を受けます。

 

その点では前述のマニー・ラミレスやサミー・ソーサとは温度差があるように感じました。

 

さて、このオークション、現在ではグレイフランネル社のサイトをいくら探してもオークション結果を見つけることができません。

 

というのもこのオークションは途中で中止されてしまったからです。

 

中止を求めたのはマントルの子供達。

彼らのコメントを以下に引用します:

“Let us be clear: Dad didn’t need and never used a corked bat. Mickey Mantle was honest about the way he played the game that he loved and to which he devoted his professional life. He was one of the best who ever played the game because of his natural talents and abilities – and his heart. Our Dad’s legacy must be protected and the injury to his reputation must be corrected – he does not deserve to be the subject of these outrageous fabrications.”

 

その後、このバットの行方は明らかにされていません。

 

 

 

マントルの”waffle iron effect” バット

 

最後にマントルの違法バットをもう1本。

2017年、ハントオークションににミッキー・マントルの実使用バットが出品されました。

紹介文に書かれていたのは「pock marked bat」。

Pockmark、つまり「ニキビ」です

このバットの表面はアイスピックで刺したような細かい跡がビッシリとあったのです。

 

このバットの出品者はMLBの審判だったエディ・ハーレイ。

彼はマントルの持っていたこのバットをルール違反であると没収し、そのまま持っていました。

 

・・・違法バットをドサクサに紛れて持ち去る関係者が多くないか?

 

ハーリーはこのバットについて以下のようにコメントしています:

このバットはルールに反するため取り上げた。マントルはwaffle iron effectがボールとの強い摩擦を生み、より飛距離が出ると考えていたようだが、私は彼にはこんなものは必要なかったと信じている。

 

「waffle iron effect」とは、ワッフルメーカーの焼き面のような凹みが生み出す効果のことを指しているようです。

 

このオークションは中止されず、バットは40,000ドルで落札されました。

 

 

 

祝福されなかったメモラビリア 

 

オークションに出品された違法バットは、(マントルのバットを除き)出品者が期待していた(であろう)ほどの高値はついていません。

 

それはセンセーショナルであったとしても、自分が眺めて悦に入る(または人に自慢する)には悪趣味だと感じる人も少なくないからでしょう。

 

勿論それが全てでは無いですが、メモラビリア の価値には「多くの人に祝福されている」という要素も少なからずあるように思われます。