【直筆サインを知る/実使用】コレクションを長期所有するために

Q.コレクションを所有するうえで対応すべきリスクは全て洗い出されているのでしょうか。
A.未知数のリスクもあるため、継続的にコレクションをチェック&ケアする必要があります。

 

コレクションに生じるリスク

 

トレーディングカードやメモラビリア、実使用アイテム(GU)を所有していると色々なリスクが発生します。

例えば、
①手を滑らせて落としてしまい、傷がついてしまった/変形してしまった
②太陽光が当たる場所に置いていたため、色が褪せしてしまった
など。

これらのリスクは回避したいところですが、そのリスクについて考えていくと、
どうも上の①と②は性質が違うような気がします。

何が違うのでしょうか。

 

 

 

「保管」と「保存」

コレクションに生じるリスクを回避する議論において、「保管」と「保存」を分けて考えようと試みるものがいくつか見られます。
この「保管」と「保存」、便宜的に本稿では以下のように定義付けします。

 

保管(protection)
外部要因による一時的な環境変化の影響を遮断した状態に目的物をおくこと

保存(preservation)
内部要因および/または外部要因による継続的な条件変化の影響を最小化する状態に目的物をおくこと

 

定義が重要なわけではありませんが、グルーピングして名前をつけることで論述が容易になるため、以下、上記の定義に従い論を進めていきます。

 

 

 

「保管」が対応するリスクと防止策

 

保管が対応するリスクと防止策としては、以下のようなものがあげられるでしょう。

 

破損/汚損
GUバットをぶつけて傷付けてしまったり、GUジャージーを汚してしまうなどです。
これらはバットならバットチューブに保管したり、ジャージーなら額装に収めたりすることで防ぐことができます。

水濡れ
トレカやフォトに飲料をこぼしてしまう、または水が撥ねてしまうなどです。
紙の場合、スリーブやマグネットフォルダー、ビニールバックで日常生活での水濡れは回避できるでしょう。
但し「水没」レベルになると難しいので要注意です。

盗難・紛失・焼失
これらは個人レベルというより、ショップや博物館でのリスクになります。
防止策としては高額ですがアーティファクト保管用の施錠キャビネットや一般の耐火キャビネットがあります。

また、American Collectors Insuranceのようにサインアイテムへの付保を用意している保険会社もあります。

 

 

「保存」が対応するリスクと防止策

 

保存が対応するリスクと防止策としては、以下のようなものがあげられるでしょう。

 

光による退色
太陽光または室内光によりアイテムおよびサインが退色してしまうリスクです。
アクリルやUVカット素材のケースに保管することで98%程度までは退色の原因である紫外線を減少させることができます。

酸性化/酸化
外的要因としてはアイテムが酸性物質と接することで劣化してしまうリスクです。
これらはAcid-Free素材を使ったケースを選ぶことで酸性化を防ぐことができます。

虫喰い
ウールなど自然素材が使用されたヴィンテージジャージーでは虫喰いが生じることがあります。
年を経た生地だと、防虫剤の成分によっては痛むおそれがあるので、できれば定期的な目視チェックが推奨されます。

 

アイテムに内在する個別リスク
サインボールの記事で書いた通り、アイテム自体が内包するリスクもあります。
これらはアイテム毎に調べるとともに、定期的にアイテムをチェックし変化が起きていないかどうかを把握していくことが防止への第一歩となります。

 

 

 

保管と保存の違い

 

保管と保存を分けて考えることのメリットは、その対応するリスクが「一回の対応で相当程度防止できるのか」「継続的に対応が必要になるのか」を切り分け、必要な対応を考えることできることにあります。

例えば、破損の場合、一度ケースに入れればその後もリスクを防いでくれますが、
虫喰いやサインボールの接着剤、紫外線は密かに侵攻するので定期的にチェックするのがよいでしょう。

 

またこれは個人的な見解ですが、アイテムの所持において「保存」は「保管」ほど注意喚起がされていないようにも感じます。
コレクションに生じるリスクを考えるうえで「保管」と「保存」を分けて考えることに一定の意義があるのではないでしょうか。

 

 

 

米国野球殿堂博物館での「保存」

 

最後に、米国野球殿堂博物館(以下、「HOF」)での「保存」についてお話ししたいと思います。

HOFでは野球カードを所蔵する場合において、そのカードがPSAやBGSといった鑑定会社の密封ケースに収められているときは、
そのケースからカードを取り出して保管するそうです。

鑑定会社のケースはカードの現状を維持するために付けられているはずですが、それをわざわざはずすのはなぜでしょうか。

HOFでのワークショップで質問した人によると理由は2つだったそうです。
①収蔵品の保管スペースの維持のため
②鑑定会社の密封ケースに長期間保存された場合、カードの受ける影響が未知数のため。

 

何千、何万と資料を保管しているHOFとって、紙1枚分の所蔵スペースも大事だというのは理解できることです。
数センチの厚さがあるケースがなければ、何枚資料が保存できるか・・・①はそういうことなのでしょう。

 

②について私が理解した範囲で注釈を付けると、上で説明した「酸性化/酸化」がその1つとして挙げられるのではないかと考えています。

海外の掲示板ではこのような投稿がありました。

つまり、紙の酸性化の原因物資は紙に接するアイテムからだけではなく、紙自身からも放出され、それが自らを劣化させるおそれがあるのではないか、というものです。

 

また、これについては資料保存を業とされている企業のサイトにも次のような記述がありました。

 

このような紙の性質を考えた場合、トレカが吐き出した酸性化の原因物質が密閉ケースのなかで充満した場合、トレカにどのような影響を与えるのか、グレーディングが始まって20年程度の現時点では、資料の長期保存を使命とするHOFとしては検証が足りないということなのかもしれません。

なお、このことについてPSA/BGSに問い合わせた方がいましたが両社共に回答はなかったそうです。

 

ちなみにHOFは取り出したカードをどうしているのか。

彼らは他の所蔵紙アイテムと同じく普段使用している「マイラースリーブ」に入れているそうです。

 

「マイラースリーブ」とはUVカット、Acid-freeが為されたビニール袋(スリーブ)の通称です。
「マイラー」はメーカー名なので、「シャーピー」や日本でいう「マッキー」「宅急便」と同じ感覚でしょうね。

 

HOFは可能な範囲で未知のリスクを避け、過去の経験からリスクが把握しやすい保存方法を選んでいるといえるでしょう。

 

「保存」とは
「継続的な劣化」と「未知のリスク」の管理であり、そのためには定期的なチェックが欠かせないということなのではないでしょうか。