Q.本人に寄らない直筆サインにはどんなものがありますか。
A.「セクレタリーオート」や「オートペン」、「狭義の偽造サイン」があります。
直筆サインの偽物とは
以前、本ブログでは直筆サインを以下のように定義しました
「人が自らの身体を使い保持した筆記用具により書き表した、自らを意味する文字記号を複写することなく媒体に付着させたもの」
またその意味として次のように分解して解説しました
解説で述べたサイン例のうち、以下では、筆記で模写された「オートペン」、「セクレタリーオート」、「（狭義の）偽造オート」についてお話ししていきましょう。
オートペンとは
オートペンとは、主に本人の便宜のため機械が本人の筆跡そっくりの直筆サインをペンで書くというものです
-旧タイプのオートペン（引用元Brian Franco Harrin “Can I have your autograph?”）
オートペンが話題になる典型例はアメリカ大統領の公式文書への署名です。
なんらかの理由により大統領本人がサインできない時、大統領の筆跡を記憶しているオートペンが代わりにサインするというもので、オバマ大統領時代に使用例があると聞いています。
セクレタリーオートとは
本人の了承のもと、秘書や専門の代理人が本人に代わってサインするというものです。
JFK等の大統領のほか、ウォーレンバフェットなどもセクレタリーオートを使っていたと言われています。
-セクレタリーオートの例（引用元:同上）
（狭義の）偽造オート
これは本人の意志に反し他人を騙すことを目的として第三者が本人に成りすまして本人のサインを書くというものです。
典型的な偽造ですが、以下のような種類があります。
クラブハウスオート
1920〜80年代ぐらいまで行われていたもので、選手の代わりに他の選手やボールボーイなどがその選手の筆跡を真似てサインしたもの。
1名のみの場合や、選手全員分の場合などがあります。
なお、球団のなかでも特にヤンキースとドジャースが多いといわれています。
ールースのサインがクラブハウスオート
ー全てクラブハウスオート
出典 『50 Most Forged sports autographs』
トレース
本物のサインの筆跡が薄いときに、第三者が上からなぞったもの。
本物のサインの筆跡が薄いときに、第三者が上からなぞったもの。
アドオン（追記）
本物のサインに、第三者が添え書きなどを追記したもの。
ーメイズの直筆サインは、サインは本物。記録のインスクリプション（添え書き）は第三者による追記（偽造）
サインと添え書き部分でペンの太さが違います。
出典同上
ーBBM「平成」沢松奈生子さんの直筆サイン部分は本物。「世界ランキング43位」の添え書きは偽造。
BBMより正式に添え書きが偽造である旨のリリースがなされています。
それぞれの主体は？
上記3つの「本人に拠らない直筆サイン」を、それを実行する主体別にしてみると以下の通りです。
オートペンは第三者が使う可能性がないわけではないですが、これまでの典型例を踏まえ本人に分類しました。
本人の意思と偽造の関係
本人の意思と偽造は面倒くさい義論になるので省きますが、参考として一例をお示ししましょう。
これは某大手オークションに出品されたマイケル・ジョーダンのセクレタリーオートです。
蒐集生活の中でもセクレタリーオートと明らかなものと出会うのはなかなか無い経験ですが、注目すべきはこれがfakeではなくセクレタリーオートとして出品されている点です。
これから分かるのは「real」と「fake(forged)」との間に、オートペンやセクレタリーオートといった別の分類が入りうる可能性があるということです。
確かに本人は書いていないという点ではrealではないが、本人が存在を認めているという点ではfakeでもないという整理もあり得るのかも知れませんね。
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